特集:
2008/05/07 日記<株式の持ち合い>
株式の持ち合い
株式持ち合い(かぶしきもちあい)とは、複数の株式会社が、お互いに相手方の発行済株式を保有する状態をいう。
日本銀行金融研究所では、「株式持ち合い(持ち合い)とは、『上場企業(信託銀行を除く)の2社が相互に株式を保有している状態』のことである」(鉤括弧部は、引用範囲。日本銀行金融研究所発行“株式持ち合いの変化と市場流動性”p.3より)と定義している。 この状態は、日本特有のものとされるが、似た構造は、ドイツでも存在した。例えば、AがBを、BがCを、そしてCがAをそれぞれ保有している場合もあり、このような関係は三角持ち合いないし循環的相互保有などと呼ばれる。ここでは、特筆しないかぎり「日本で発生した株式持ち合い」について述べる。
株式持ち合いの発生
みずほ証券エクイティ調査部チーフストラテジストの三宅一弘の報告奥村宏著、“株式相互持合いをどうするか”、岩波書店、2001年06月、第2章“株式持ち合いの歴史的形成要因と今後における問題点”(三宅一弘の報告)、ISBN 4-00-009234-0によれば
持ち合いも含めた安定株式比率は、戦後復興から1960年あたりを「第一次持ち合いブーム」、1965年(昭和40年)の証券不況から石油ショックまでを「第二次持ち合いブーム」として、第一次石油ショック前までには、日本の企業集団(企業グループ)が安定株式比率の上昇と歩調を合わせるように、ほぼ出来上がったと述べている。 三宅一弘は続けて、90年以降のバブル清算に加えて、日本型企業システムの再構成が迫られている一貫として、株式持ち合いの解消や安定株式比率の低下が生じているものの高度掲載成長期に持ち合いが行われ安定株式比率が高まっていたことは、当時の日本経済、資本市場、金融市場、個人資本貯蓄の状況を考えれば経済合理性があったと主張している。丸山夏彦の著物丸山夏彦著、“株式持合解消で強くなる企業と弱くなる企業”、研修社、BSIエディケーション (発売)、2000年03月、ISBN 4-7657-3954-6では、第一次ブームを、1940年後半〜1950年代の連合国軍最高司令官総司令部|GHQによって、財閥各社の株式が大量に分散した事を起因とする敵対的買収からの防衛策が行われたこと。第二次ブームを、1960年後半〜1970年代の国際通貨基金|IMF8条国、関税および貿易に関する一般協定|GATT11条国への移行。そしてOECDへの加盟に伴う「貿易外経常取引」「資本移動の自由化」の義務を負う事となり”第二の黒船襲来”と外資からの買収に対する危機感が強まったこととしている。丸山夏彦の著物の中では、第一次ブームの詳細として、岡崎哲二の著物(持株会社の歴史:財閥と企業統治、筑摩書房、1999.6、p.33)を元に、三井財閥を例にとり三井銀行や三井物産など直系会社の場合、三井合名での持株比率は100%、少ない場合でも30%は超えていたとするが、大量分散後の1949年には、個人による株式保有率は、全株式総数の69%を占めるに至った結果として、株主無責任の問題が浮上し敵対的買収が容易な状況であったと述べており、敵対的買収が容易であった実例として、有沢広巳監修、安藤良雄ほか編、昭和経済史. 中、P.149を元にして、1952年に起きた旧三菱本社の不動産を引き継いだ陽和不動産の株式が藤綱久二郎という投機師に35%買い占められた事件を紹介している。 第二次ブームの詳細としては、寺沢芳男著、“英語オンチが国を亡ぼす”、東洋経済新報社、1997.3の106頁を引用して、外資系からの買収不安を煽った株主安定工作があったことを指摘してた上で、一次二次どちらも買収に対する危機感があったと述べている。
株式持ち合いの形成要因
三宅一弘の報告によれば、持ち合いが形成された要因は、
の3つとされている。
問題点と解消の動き
株式の持ち合いは、子会社による親会社株式取得と同様に、以下の危険性がある。
2007年現在の会社法上の規制としては、4分の1以上の取得している場合に議決権が停止される(会社法308条1項括弧書)。その4分の1に該当するかの基準については、実質的基準をもってその判断をあたることになっている(実質的支配基準。会社法施行規則67条)。この規制は、上述の資本空洞化・議決権の歪曲化を防ぐという、企業結合法の要素から規定されたものである。
また株主持合そのものの規制ではないが、関係規制として、5%の株式を保有する株主の情報開示、金融会社の5%基準、資産総額100億円以上の単体総資産20億円以上の会社の株式をもつ場合、発行済み株式総数の10%、25%、50%を超えて取得、保有する場合の公取委の報告義務などがある。また最近では、株式持合の再評価がなされている。 原因として、規制緩和を行い、株式持合いを解消する結果、外国資本による日本への投資・買収がさかんになるというおそれからである(関岡英之氏『拒否できない日本』(文春新書、2004年)のようにアメリカの圧力からみる視点、吉村典久『日本の企業統治』(NTT出版、2007年)などのように日本型経営システムを再評価する形からみる立場、その他、新たな再編への利用策として持合を利用するべきとの思考もあり、さまざまな持合への評価がなされている)。 他方で、従来から持合に対して否定的な立場であったものは、「花見酒の経済」との見方をとるものもあるし、資本主義経済を取っている以上、持合は不可解なものであり、一切を禁止するべきとの見解(奥村宏氏の思考)や、持合の数量規制を5%にすべきとの発想はなされていた。市場において、浮動株として、あまり好ましくないとして、株式持合いが極端になされた事案について、市場の圧力(新聞記事など)によって、その保有をやめるものまであったのは事実である。
脚注および参考文献
関連項目
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